近くて遠い

隣国ニュースを拾い読み

尚品宅配、ジェリーイェン(言承旭)をイメージキャラクターにキャンペーンイベント~ナチュラルで気ままな生活を取り戻そう

 5月21日、上海北外灘ラッフルズシティで尚品宅配による「随心選×ジェリーイェン・2023年新ネイチャーシリーズ紹介イベント」を開催した。
 ジェリーイェンは「ナチュラル生活大使」としてイベントに参加し、アウトドアスポーツ愛好者や自由でヘルシーな生活を志向する会場の人々に自然との間に境のないライフスタイルを伝授した。

cn.chinadaily.com.cn

瀋従文 生誕120周年記念国際学術シンポジウム北京で開催

 瀋従文の生誕120周年記念国際学術シンポジウムが中国社会科学院古代研究所、考古研究所の主催により、会場とオンラインを結ぶ複合形式で北京で開催されている。中国各地の大学から40名以上の専門家たちがこのシンポジウムに参加。
 会場では、瀋従文の文学上、歴史学上の功績をたたえ、特に『中国古代服飾研究』に代表される物質文化史のパイオニアとして、またその文化芸術史学の発展に果たした役割についての振り返りが行われた。
 また、参加者たちは、それぞれの現在の研究について討論を行い、物質文化は中華文明の重要な一部であり、その継承的な発展は国家と民族の発展に非常に重要な意義があるとした。中国シルク、服飾研究は中国古代物質文化研究の重要な内容であり、前の世代の歴史学者が切り開いた学術伝統を継承するべきである。とくに中国古代物質文化研究学科の建設を進め、さらに多くの学際的研究を行い、中華の優秀な伝統文化の創造性の転化とイノベーショナルな発展に貢献し研究を支えるべきだとまとめている。

〔感想〕
 瀋従文(1902-1988)は苗族の作家であり、中国古代服飾史研究のパイオニア。1949年の中華人民共和国建国前には『辺城』をはじめとする多くのすぐれた文学小説を発表していたが、建国後は政治思想上の強い圧力をうけ、自殺を試みたり労働改造所に送られたりした。このため作品発表は行わなくなり、新たな道として中国古代服飾の研究に非常に大きな貢献をした。
 主催したのが文学研究機関ではないのだから当然のことだが、彼の功績が服飾研究の方面にのみ偏っているのが残念だと思った。
news.gmw.cn

監視カメラがとらえた心温まる商店主と人民警察官のエピソード

 7月16日に四川省広元市蒼渓県(中国では市の下に県がある)の商店で起きた出来事が監視カメラにとらえられており、その動画がネット上で拡散している。

 現在もゼロコロナを目指して闘いを続けている中国では、各地でロックダウンやPCR検査が常態化している。ここ数日新規感染者が増え続けている蒼渓県でも人民警察と補警(正式な公務員試験を通らずに雇用された補助業務を行う警察官)が24時間輪番体制で業務にあたっている。早朝から深夜まで炎天下のなかでもコロナウイルスとの闘いに勝利するため、また人々の健康と平和を守るために警察官たちが奮闘しているのだ。
 この出来事は、7月16日の午後、蒼渓県公安局の警察官たちが県都の北門大道PCR検査場で場内整理を勤めていたときに起きた。猛暑厳しく警察官たちは近くの商店へ冷たい飲み物を買いに行った。しかし監視カメラがとらえた映像には、代金を支払おうとした時、店主が支払いQRコードを覆って、警察官たちのミネラルウォーター料金を支払うのを「お金はいいですよ、皆さんお疲れ様です」とねぎらいながら断っているのが映っている。仕方なくミネラルウォーターをもらってそのまま立ち去ろうとする警察官に、店主はさらに「おまわりさんたち、何人ですか?水、届けに行きますよ」ともいうのだったが、それは警察官も断った。
 場内整理の任務にあたっていた警察官たちは「店の主人のねぎらいは、炎天下でアイスクリームにありつけたように感じられた。地域の人たちの理解と心遣いを受けて、今後はさらに住民サービスに努めるつもりだ。」と話したとのことだ。

【感想】
 中国の警察は、日本の警察よりも種類が様々で、その内容も司法警察、国境警備、消防など幅広い。日本なら行政の仕事となるような住民票や移民関係業務もある種の警察の業務の一部だ。そして、ここ数年はPCR検査などの防疫業務にも町の警察官たちが立ち会っている。確かに暑い中でも寒い中でも任務にあたる警察官たちは本当に大変だ。
 このニュースは、最初は地方のSNSニュースサイトで、その次に成都の地方新聞社『紅星新聞』のウェブサイトで報道された。確かに心温まるエピソードだとは思うが、この監視カメラの動画の入手経路や、なぜ商店の正面からの写真がしっかりアップで写っているか、また相手が警察官でなく、街頭清掃作業員でも同じように水を無料提供するのだろうか、など少し考えたくなる報道だなと感じた。

【参考】
http://【广元正能量】监控画面,执勤民警买水付款时被老板拒绝,称:不要钱,不要钱,你们辛苦了!|卡点|公安|战疫_网易订阅 (163.com)
http://感动!酷暑下执勤民警买冰水 小店老板连续盖码5次拒收钱:一点心意 (cdsb.com)

人民網のショートムービー「建功立業」を見て

 今回は、7月4日に人民網にアップロードされた9分間ほどのショートムービーを紹介したい。
まず、内容は以下の通り。

シーン1

 主人公のタクシー運転手(朱さん、50代後半の男性)が荷崩れによる交通渋滞情報を交通情報番組へボランティア報告し、その後、携帯電話で今日の乗客の忘れ物を届けることを落とし主の乗客と約束。ところが、腰につけたポシェットに入れてあったはずのその乗客の忘れ物をなくしたことに気づく。

シーン2

 道端に車を止めて念入りに車内を探すが見つからないため、今朝交通事故に遭ったけが人を一緒に救助したガードマンのところへ行って尋ねてみる。しかし、「そんなの知らないよ。あんたどこに行ったかよく思い出してみなよ」と言われ、運転手は落とし物の主を降ろした後のことをふり返る。

シーン3

⛅回想
 主人公が「空港から200元の長距離のお客さん。今日はついてるなあ。」と言いながら車の中を拭き掃除。すると、後部座席の下にノーブルブルーの小箱が落ちているのに気づく。と、その瞬間、数メートル先からガードマンが走ってきて「運転手さん、ちょっと車を貸してくれ!」と言い、頭から血を流したお爺さんを連れてくる。最初は「先約があるんだ」と話していた運転手だったが、けが人を見るとすぐ「早く乗って!」と親切にけが人を自分の車に乗せる。付き添ってきた病院で看護師から「ご家族の方、会計してきてください」と呼ばれ、見ず知らずのお爺さんの治療費を支払ってあげる。この時には例の落し物はまだポシェットの中にあった。
 その後、道端でバイクの故障で困っているフードデリバリーの青年を見かけると、「この辺にはバイク修理店は無いな。デリバリー時間内に届かないとマイナス評価食らっちゃうだろう?乗りなよ!」と言って配達地点まで乗せてあげる。運転しながらミラー越しに青年を見て「おまえさんどっかで見たことあると思ったら、この間火災現場の救助活動で活躍した人じゃないか。ニュースで見たよ。今日はあんたを無料で乗せるよ。」と言う。
 つぎに食堂へ行き、お金がなくてオーダーできずに困っている様子のお客を見かけると「“一人前セット”を頼むといいよ」と話しかける。(実際には、この運転手がおごっている)そして、自分のいつものテイクアウト分もオーダーしてから、店の前でタクシー車両を乾拭きする。ここで、回想シーンが終わり、運転手は何かを思い出した表情になる。

シーン4

 最後に寄った食堂に戻って、どこかに落ちていないか探していると、食堂の店員さんが「朱さん、これを探してるんじゃないの?」と例のノーブルブルーの小箱を見せる。これは、さっき運転手がおごってあげたお客さんが拾ってくれたものだとのこと。運転手は、ホッとして大喜びで小箱を受け取る。

シーン5

 運転手は入院している自分の妻のところへテイクアウトした食堂の夕食を届ける。(中国では、病院食が提供されるところは少なく、入院患者の食事は家族が準備するのが一般的だ。)「遅くなって悪かったな、お腹空いてただろう」とやさしく言いながら、妻の前に食事を並べる。妻も「もう今日は仕事に戻らないでいいわよ。今日の分がまだ稼げてなくても、もうあがりにして。」と夫を思いやって話す。しかし、運転手は「今日はどうしても戻らんといけないんだ」と言って病院を出る。

シーン6

 落とし主のところへ到着し、落とし物の小箱を渡す。「家族の用事があったので、遅くなってすまなかった」と言うと、お客の方は「無理だと思っていたのに、本当にこちらこそありがとう」と話す。運転手は「こんなに大事なもの、どんなことをしても搜すさ!」と答えながら昼間の乗客の様子を思い出す。
⛅回想(その日の昼間、乗客を乗せて運転しながらミラー越しに彼の話を聞く運転手)
 後部座席に乗る客が大事そうにノーブルブルーの小箱を両手で触りながら話す。
「私と妻はふたりとも駅で働いていたんだけれど、私は昼間の勤務が多くて彼女は夜勤が多かったんです。祝日もシフト制だからまるで遠距離恋愛みたいにして付き合っていて…。去年ようやく入籍したばかりだったんだけれど、緊急任務が入って、自分たちは結婚休暇も自主的に取り消したんだ。指輪を買う時間すらなくて…。今回は埋め合わせをしなくっちゃ。」
(話の様子から、おそらく鉄道公安の人だとわかる)

シーン7

 家に帰る途中の運転手。感慨深げな表情で運転していたが、路肩に停車して、お守りのように運転席の前に置いてある家族写真を眺める。写真には、運転手と妻が並んで座るうしろで二人の肩を抱くようにして立つ人民解放軍の息子が写っている。
⛅回想
 息子がまだ5~7歳くらいのころの運転手一家が路上で夫婦で新しく手に入れたタクシー車両を磨きながら小さな息子と話している。若き日の主人公が「これからは、行きたいと思ったところへいつでもいけるさ。どこへ行きたいか言ってごらん。」というと、ボンネットの上に座りリンゴを丸かじりしながら「キリン見に行きたいなあ。それに、海も見に行きたい。」と子供は無邪気に答えた。「お父さんのせっかくの休みに、何言ってるの」と母がたしなめると「何言ってるんだ、どこでも連れて行ってやるよ。ところでおまえ、大きくなったら何になりたいんだ?」と子供に向かって話す主人公。息子「人民解放軍だよ」、主人公「わ、お前聞いたか?人民解放軍だって」、妻「ええ、ええ」セピア色の懐かしい情景が主人公の心の中で思い出されている。

シーン8

 回想シーンが終わり、家に帰る。誰もいない部屋に向かって「ただいま」という主人公。仕事着を脱ぎ、冷蔵庫からリンゴを一つ取り出す。息子の写真の前に供えてから「今日もお前に恥ずかしくない働きをしてきたよ」と話しかける。一人息子は任務中に亡くなったらしいことが分かる。人民解放軍の制服と共産党バッチがアップにされる。
 翌日の主人公の変らぬボランティア精神あふれる生活が始まったところで動画は終わる。

 最後に主人公、フードデリバリーの若者、食堂の店員さん、落とし物をしたタクシー乗客、国境警備中に亡くなった息子の顔写真が並べられ、「彼らはみな同じ共産党員である。彼らは私たちのそばにいる」という解説が出る。
つづけて習近平の声で「普段から見てわかる。大事な時には立ち上がれる。危機を乗り越えなければならない時には必死になって力を出す。すべての共産党員は、民族復興という偉大な目標にむかい、党と人民のために功を立て業を成している!」という締めのナレーションが流れ、「この動画を通して、あまたいる一般共産党員たちに敬意を表する」のテロップで動画は終わる。

【感想】

 人民日報のウェブサイト版である人民網は現在マルチメディア化を推し進めており、多くの動画が視聴できるようになっている。市民の生活に密着したものから、政府のプロパガンダ的なものまでさまざまあり、党が人民に近い存在であることを印象付けている。しかし、内容的に党の政治路線に外れることは決してない。
 このショートムービーの主人公のような息子を軍事任務で喪い妻も入院中というタクシー運転手が、党員として精一杯身の回りの人たちに貢献しようとする姿を見て、中国の市井の人々は何を感じるのだろうか。今の中国の文芸路線が表れている動画だと思う。
 ちなみに大学でも「毛沢東思想概論」などの授業では、学生たちがショートムービー(微電影)を作成する課題がよく出されているが、学生たちが作る動画もこの路線と同じである。

神舟13号の乗組員が地球に帰還後初の記者会見

昨日6月28日午後、北京宇宙センターで地球帰還後74日がたった神舟13号の乗組員たちの初の記者会見が行われた。記者会見に臨んだのは、葉光富、翟志剛の男性乗組員と王亜平の女性乗組員の三名だ。彼らは、帰還後の隔離回復と心身療養を順調に行っており、現在は医学的な検査においても心肺能力、筋肉量、骨密度などが回復しているので、まもなく通常訓練に戻る予定だ。
 2021年10月16日から今年4月16日までの半年間の有人飛行任務で、三人は中国人宇宙飛行士の軌道上飛行の連続滞在時間記録を更新し、「気持ち良く」一連のイノベーティブで難度の高い科学実験と実用宇宙空間任務を遂行した。
 記者会見の場で三人は、それぞれ中国の人々の宇宙開発事業への支持と理解、関連業務に携わる人々の苦労などへの感謝の言葉を述べた。中国人宇宙飛行士の中で最も船外活動経験豊富な翟は、地上訓練においても宇宙においても「気持ちよく」いられるのは中国の有人宇宙飛行事業の発展のおかげであり、この感覚はこれからも続いていくに違いないと話した。王は中国の女性宇宙飛行士として初めて船外活動に従事した。また宇宙から教師活動を行った初めての中国人として、今後多くの中国の青少年が宇宙への夢をもち、中国宇宙ステーションの建設に参与し、宇宙ステーションがますます実用的で素晴らしいものになることを願うと述べた。葉は今回が初めての宇宙飛行だったが、国際合作プロジェクトに初参加した中国人宇宙飛行士となった。彼は、中国宇宙ステーションは各国の人々との協力を歓迎すると述べた。
 中国は、ロシア、アメリカに続き世界で三番目に有人宇宙飛行を成功させた宇宙開発大国である。また、中国宇宙ステーションの建設を着々と進めている。今回の神舟13号のミッションにも、完成が近づきつつある宇宙ステーションとのドッキングやリモートコントロール、長時間の船外活動などが含まれていた。

感想

 中国の宇宙飛行士も、ロシアやアメリカと同じく、空軍戦闘機部隊の軍人の中から選抜され、厳しい訓練ののちに宇宙へと飛び立つ。日本人宇宙飛行士のような実験などのためのミッション人員ではなく、すべての運行作業に携わることが求められる人員である。宇宙へ飛び立つことも中国語では「出征」というのだから、まさに一種の闘いだ。記者会見での発言や態度も、祖国への忠誠心にあふれた軍人ぶりを発揮していると感じた。また、宇宙飛行士を表す英語は一般的にはastronautだが、中国では taikonautという言葉がよく使われている。これは中国語で宇宙を表す「太空taikong」をつかって英語風にした単語だが、この言葉が正式に使われている辺りにも、中国の宇宙開発にかける意気込みの本気度が感じられると思う。

中国の全国統一大学入試、番外編エピソード

昨日6月23日、中国の全国統一大学入学試験の各大学の一次合格ラインが発表され、各地の受験生たちの悲喜こもごもがネット上で話題となっている。優秀な高校生や、多数の教え子を名門大学へ送り込む高校教師の話題のほかに、異色を放つユニークな受験生の話題もある。

 中でも、毎年SNSなどでヤヤ受けしている「中国第一鉄脳殻(強靭な脳みそ中国ナンバーワン)」「現代の范進(『儒林外史』中の人物。長年科挙に合格しなかったが老年に差し掛かり合格した。)」「中国考生王(中国の受験王)」などともてはやされる梁実氏の話題が今年も注目を集めている。
 梁実氏は今年55歳、この六月に中国の全国統一大学入試を受験したうちの一人だ。彼は1983年から何度も大学入試試験にチャレンジし、今年が26回目の受験だったが、今年も彼の目指す四川大学の合格ラインに達することはできなかった。これまでの受験で、彼はずっと数学科を目指してきたが、今回は初めて理系から文系へと転向しての受験だった。文系に転向したことで、彼はかなり自信を持っていたようで、今年の受験前には四川大学が無理でも自分が納得できる大学の合格ラインに達していたら二次試験を申し込むつもりだと語っていた。しかし、実際には二本線(難関重点大学よりもワンランク難度の低い大学)の合格ラインにも達していなかったため、彼は来年も再チャレンジすることを誓っているとのことだ。
 梁実氏の若いころ、1980年代前半、大学卒業は大きな価値をもつものだった。卒業後の仕事は国によって保障され各機関に配属が決められるようになっており、農村貧困家庭の子どもにとっては、都市戸籍とエリートの生活を送ることが保障される唯一の道だった。しかし現在では、中国でも高等教育が普及し、また大学卒業後の仕事も保障されておらず、当時のような意義はほとんどなくなっている。それでも彼にとって名門大学で学ぶことはあきらめることのできない人生の夢なのだ。
 
 彼に対するSNS上のコメントは様々で、「ただ世間の注目を集めたいだけなのでは」「今さら大学に行ったって、卒業するころには退職の年齢だ」などといった冷めたものもあるが、自分の夢をあきらめずに追い続ける姿に好意的なものが多いようだ。

感想

 梁実氏は、20代半ばで家庭を持ち、一人息子は現在アメリカの大学院に留学中。建材会社の社長としても成功をおさめている。それでもなお大学受験にチャレンジし続けている姿に中国社会では嘲笑と激励の両方の反応がある。中国は多様性が認められにくい社会だと言われるが、勇敢に自分の道を歩み続ける人もいるのだ。

スーパー野菜売り場がインスタ映えスポットに

** 上海で話題となった「菜市場文学」?!
 ここで「文学」は、店内ディスプレイや商品ポップのキャッチコピーのことだ。6月に入り、上海でロックダウンが解かれ企業活動の再開や工場生産の回復が進んでいる。そんな中で、大潤溌(RTマート)の店内ディスプレイのキャッチコピーがネット上で話題となっている。
 ロックダウン期間、人々はキャベツ、人参、ジャガイモなど保存のきく野菜しか食べられなかったため、これらの野菜は現在、人々にとって「もうしばらくは食べたくない」ものとなっている。
 それらの冷遇されている野菜の気持ちを代弁するキャッチコピーとして「私の一枚一枚があなたを守る鎧。この何層もの守りで平穏無事(キャベツ)」「野菜炒めのヘラはこれまで一度も私だけのものになったことがない(人参)」などと言ったクスッと笑えるものが店内ディスプレイに表示されているのだ。また、そのほかにもニンニクには「料理に緑が足りなくてもニンニクさえあれば格好がつく。料理が少なくても葱さえあれば問題ない。」など、上海市民のこれまでの実感を如実に著すキャッチコピーが並び、ネットユーザーの話題をさらっていた。
** 青島の農作物市場(中国版マルシェ)で行われた快手小店の文学イベント
 こちらの「文学」も同じく市場の中につるされている大型ポップなどのキャッチコピーのことを指しているが、これは野菜の気持ちを代弁するというものではなく、売り手の気持ちを代弁するユニークなものだ。
 6月10日~12日、快手小店は「実在人里面請(誠実な人はどうぞ中へ)」と銘打つユニークなイベントを開催した。快手小店は中国のeマーケットプレイスの一つで、動画配信による販売を得意としている。市場の中にはカラフルな絵や文字が踊り、「誠実なら”鶏毛蒜皮”(中国語でどうでもよいものの例えとして使われる慣用句)も軽視しない。鶏もニンニクも尊重する」、「市場で聞こえる値引きの掛けひきには暮らしへの情熱が込もっている」などと書かれている。誠実にフォーカスした人情味あふれる販売で懐かしの市民生活を体現して、インスタ映えスポットという話題づくりを仕掛けていた。

*** 感想
 ふたつの「菜市場文学」は、その趣旨はやや異なっているが、ロックダウンなどで行動の自由が制限されていた中国の人々のニーズに寄り添ったものだと感じられる。今後どのような生活になるのか分からない中でも、中国の人々の需要をすぐに反映させる流通業のたくましさを感じた。