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スーパー野菜売り場がインスタ映えスポットに

** 上海で話題となった「菜市場文学」?!
 ここで「文学」は、店内ディスプレイや商品ポップのキャッチコピーのことだ。6月に入り、上海でロックダウンが解かれ企業活動の再開や工場生産の回復が進んでいる。そんな中で、大潤溌(RTマート)の店内ディスプレイのキャッチコピーがネット上で話題となっている。
 ロックダウン期間、人々はキャベツ、人参、ジャガイモなど保存のきく野菜しか食べられなかったため、これらの野菜は現在、人々にとって「もうしばらくは食べたくない」ものとなっている。
 それらの冷遇されている野菜の気持ちを代弁するキャッチコピーとして「私の一枚一枚があなたを守る鎧。この何層もの守りで平穏無事(キャベツ)」「野菜炒めのヘラはこれまで一度も私だけのものになったことがない(人参)」などと言ったクスッと笑えるものが店内ディスプレイに表示されているのだ。また、そのほかにもニンニクには「料理に緑が足りなくてもニンニクさえあれば格好がつく。料理が少なくても葱さえあれば問題ない。」など、上海市民のこれまでの実感を如実に著すキャッチコピーが並び、ネットユーザーの話題をさらっていた。
** 青島の農作物市場(中国版マルシェ)で行われた快手小店の文学イベント
 こちらの「文学」も同じく市場の中につるされている大型ポップなどのキャッチコピーのことを指しているが、これは野菜の気持ちを代弁するというものではなく、売り手の気持ちを代弁するユニークなものだ。
 6月10日~12日、快手小店は「実在人里面請(誠実な人はどうぞ中へ)」と銘打つユニークなイベントを開催した。快手小店は中国のeマーケットプレイスの一つで、動画配信による販売を得意としている。市場の中にはカラフルな絵や文字が踊り、「誠実なら”鶏毛蒜皮”(中国語でどうでもよいものの例えとして使われる慣用句)も軽視しない。鶏もニンニクも尊重する」、「市場で聞こえる値引きの掛けひきには暮らしへの情熱が込もっている」などと書かれている。誠実にフォーカスした人情味あふれる販売で懐かしの市民生活を体現して、インスタ映えスポットという話題づくりを仕掛けていた。

*** 感想
 ふたつの「菜市場文学」は、その趣旨はやや異なっているが、ロックダウンなどで行動の自由が制限されていた中国の人々のニーズに寄り添ったものだと感じられる。今後どのような生活になるのか分からない中でも、中国の人々の需要をすぐに反映させる流通業のたくましさを感じた。