近くて遠い

隣国ニュースを拾い読み

日本の地震についての報道

 3月16日の夜中に発生した地震、驚きましたね。中国ではどのように報道されているのか見てみることにしました。中国でも、発生後すぐに、中国地震観測所の公式サイトなどで発表されました。その後、SNSでは多くのネットユーザーが情報を拡散し、コメントも多数出ていました。が、ここでは報道機関のウェブサイトを見てみたいと思います。

環球網(環球時報旗下のニュースサイト)に17日朝8時33分アップロードされたニュースでは以下の通りです。

タイトル「日本政府は原子力発電所に異常がないことを発表」

 日本のメディアの17日の報道によれば、地震発生後、福島第一原子力発電所の5号タービン建屋で警報が鳴ったが、消防が駆け付けたところ火災は発生しておらず、また同発電所放射能測定値にも変化はなかったとのことだ。
 福島第二原子力発電所の一号機と三号機の使用済み核燃料冷却プールのポンプも一時停止したが、すでに復旧している。
 宮城県にある女川原子力発電所は、地震による異常はない。同発電所の一号機は廃炉状態であり、二号機と三号機も運転停止状態である。
 福島県の隣、茨城県内の東海第二原子力発電所などの原子力関連設備でも異常は報告されていない。
 同じように地震の影響を受けた青森県でも県内の原子力関連施設に以上の報告はない。
 岸田文雄首相は17日午前1時50分ごろに行われた記者会見において、日本各地の発電所地震後の異常は起きていないと述べた。

環球報では、地震の被害よりも、原子力発電所についてのことに注目して報道していることがわかります。

紅星新聞網(成都伝媒グループ旗下のニュースサイト)が地震発生から半日たった17日11時19分にアップロードしたニュースでは以下の通りです。

タイトル「日本で大地震 4人死亡、百人近くが負傷 今後一週間はまだ強い揺れの可能性」

現地時間16日夜、福島県沖で連続して数回の大きな揺れの地震が発生した。日本の気象庁の最新の観測によれば、最大でマグニチュード7.4だったとのことだ。17日午前、地震により4人が死亡し、100人近くの負傷者が出た。福島原子力発電所使用済み核燃料プールの冷却システムが一時停止し、貯水槽にも不具合が生じた。岸田文雄首相は、今後数日から一週間以内にもう一度大規模な地震が起こる可能性があると述べた。

【死者4人、負傷者も百人近い】
 現地時間17日午前、岸田文雄首相は参議院において、同日午前8時までの状況として4人が亡くなり、97人の負傷者が出ていると述べた。それより前のNHKの発表では、負傷者の大部分は揺れの最も大きかった宮城県福島県にいた人だったという。
【福島原子力発電所冷却システム停止】
 地震の影響で、福島第一原子力発電所の2号機の使用済み核燃料冷却システムが停止した。冷却プールには615の燃料棒*1がある。東京電力は、現在水温は運転管理上の制限値である65℃には達しておらず、作業員が手動でポンプと弁を止めたとのことだ。
 福島第一、第二原子力発電所の複数の使用済み核燃料プールは一旦停止したものの、現地時間17日午前4時には復旧した。
 このほかに、福島第一原子力発電所内の汚染水保管タンク1基の位置がずれた。
【新幹線が脱線】
 東日本鉄道会社*2によると、地震により東北新幹線が一両脱線したとのことだ。当時車内には乗客乗員合わせて78人が乗っていたが、脱線後、二キロメートル歩いて現場を離れ、死傷者はなかったとのことだ。この影響で、線路は封鎖されており、復旧には「相当な時間」かかる見込みで、具体的な復旧日時はまだ分からないとのことだ。
【大規模な停電、断水】
 地震発生後、関東や東北、甲信越の広い範囲で停電が起き、その戸数は200万個をこえた。関東の大部分の地域ですでに電力の供給が再開しているが、東北地区では、まだ3.5万戸が停電したままである。また、地震の影響で、宮城、福島、岩手の各県で数千戸が断水しており、現在緊急復旧工事にあたっているとのことだ。
津波警報の解除】
 地震発生後すぐに、宮城県福島県では津波警報が発令され、人々に海岸から離れるようにと呼びかけられた。その後、津波は各県に到達したが、最大でも30センチだった。このため、津波警報は現地時間5時にはすべて解除された。

紅星新聞網の報道もやはり、原子力発電所の報道が詳しいですが、どちらかと言えば多面的で客観的な感じがします。中国国内で自然災害が起きると、その復旧や救助にあたった人たちの働きを報道する英雄物語が前面に押し出されて報道され、ニュースなのに客観的な数字などは分かりにくくなっていることが多いのですが、他国の災害報道ならこういうふうにできるんだと分かりました。

これに対し、新京報では、17日の17時10分に以下のようなタイトルで報道されていました。さすがに北京市民のタブロイド紙の本領発揮です。

タイトル「日本の地震は富士山の噴火を引き起こすか?日本気象庁の回答」

 現地時間3月16日、福島県沖で大きな地震が発生し、この地震により富士山が噴火するかもしれないとの推測があった。日本の気象庁職員は本紙のこの問題に関する取材に対し、気象庁では地震と関連した特定の火山活動の予測は発表していないが、現在のところ富士山は正常であると述べた。
 気象庁職員の森川弘明氏は「これまで継続して富士山の火山活動の観測を行ってきているが、現在のところ全て正常だ。地震と関連した特定の火山の活動予測は行っていないが、日本政府はすでに火山の噴火を含めた災害の危険を少なくするように予備措置をとっている。」と述べた。
 中国中央電視台ニュースによると、現地時間3月16日23時36分、福島県沖で大きな地震が発生した。本日未明、気象庁はこの地震マグニチュードを当初の7.3から7.4へと訂正した。地震発生時、日本では多くの場所ではっきりとした揺れが感じられた、とのことだ。
 これまで何度も富士山が噴火するのではないかと人々の間で言われている。今年一月にトンガで火山が噴火したときも日本の富士山に噴火の兆しがみられるとの意見があった。これに対し、国際火山学及び地球内部化学協会(IAVCEI)のロベルト・スルピチオ氏は本紙の取材に対し、「富士山は活火山であるから、いつか必ず噴火する。しかし、富士山は世界中でもっとも厳重に観測されている火山の一つであり、もしも噴火の前兆があれば人々には必ず知らされるはずで、近いうちに富士山が噴火することはないだろう。」と述べた。
 すこし前の2021年12月にも日本で地震が起こった時にSNS上では富士山が噴火するのではないかといううわさが流れた。ロイター通信社は2021年12月に、当時気象庁では富士山が噴火する可能性が高まったというデータはないとしていると報道していた。

中国でなんとなく期待をもって語られているとしか思えない富士山大噴火…、ちょっと複雑な気分になります。

https://news.ceic.ac.cn/中国地震台网——首页 (ceic.ac.cn)
https://world.huanqiu.com/article/47DywdcEoAZ
http://news.chengdu.cn/2022/0317/2250010.shtml
https://www.bjnews.com.cn/detail/164750797214892.html

*1:報道の原文では、「燃料棒」となっているが、燃料棒を複数本束ねたものが「燃料集合体」であり、実際にはこの「燃料集合体」が615体あるようだ。

*2:正しくは東日本旅客鉄道株式会社だが、原文では単に「東日本鉄道公司」になっている。